フランス女性と同棲中

ナンパしたフランス人と同棲する高卒ニートの整理と極論

フランスで聞いた、50年つづく結婚生活の秘訣/ニートのフランス滞在記⑪

今回のフランス滞在の目的の1つは、
彼女の祖父母の金婚式に出席することだ。
(写真は金婚式当日のテーブルの様子)

なにしろ日本からやって来る僕らのために、
日程までズラしてもらっているのだから、
「フランス語がぽぽぽぽーんな日本人ニートですので、
 恥ずかしいから参加は遠慮させてください」
と言うわけにはいかないのだ。

普段のジャンとミシュリーヌ

ただ、結婚50年と聞くと仲良し夫婦のように思えるのだけれど、普段のジャンとミシュリーヌを見ている限りでは、とてもそうは思えない。

2人はいつも口喧嘩しているからだ。

フランス語なので、2人が会話している細かい中身についてはぽぽぽぽーんなのだけれど、それでも声のトーンで分かるくらい、いつもいつも喧嘩しているのだ。

僕の想像だけを元に、食事準備をする2人にアテレコしてみると、こうなる。

「おい待て。まだ焼き足りないんじゃないか!?」
「いいのよ、マリーヌもコウモリも待ってるんだから急がなきゃ」
「ダメだ待て、ちゃんと焼けてないものが美味いわけがないだろう」
「レアが良いってコウモリは言ってたから、いいのよ」
「待て待て待て。それにしてもまだ生焼け過ぎるんだ」
「いいからいいから」
「もう!待てって!」
「お待たせー、マリーヌ、コウモリ、出来たよー」
「あー、もういい。勝手にしろ、自分のはゆっくり焼くからな!」

ともにテレビ局の重役であったジャンとミシュリーヌは、どちらも我が強いように見える。正直に言って、「よくこれで50年も続いてこれたよね!?」と思ってしまうくらいだ。

いよいよ金婚式

金婚式のパーティが行われるのは、ミシュリーヌの古い友人がやっている小さいレストランだった。そこに向かう車中でも、ずーっと口喧嘩が行われていた。車を運転するジャンが道を見失い、それに助手席のミシュリーヌが文句を言う。そこから30分以上、2人はどちらの道が正しいかで口論を引っ張り続けながら、会場に向かって(あるいは違う方向に向かって)車を走らせていた。後部座席にいる孫のピエールとマリーヌは、何を言っても仕方がないと疲れた諦め顔をしている。

マリーヌの隣で僕は、窓の外のエッフェル塔を見ていた。加速していく老夫婦の、異国語で放たれる意味不明なコトバの銃弾を浴びながら。


迷い者達が夕暮れ、さらに迷う者をたたく
その音が響き渡れば、くちげんか加速していく
見えないジャンが迷子で、見えない銃を撃ちまくる
そろそろ日本語聞かせておくれよ

脳内で再生していたブルーハーツが止んだのは、不意に車が止まったときだった。先にレストランに向かっていたジャンマーク(老夫婦の息子で、マリーヌの父)が、道案内のために引き返してきてくれたのだ。そこから先は、ジャンマークの車の誘導についていく形で進み、その15分後に老夫婦の口調は変わった。

「仲直りしたみたい」
マリーヌが、日本語でこっそりと僕に告げる。
「うん、雰囲気で分かった。どこで謝ったのかは分からなかったけど」
「謝ってはないかもね」
「いつもこんな感じ?」
「うん、いつもこうだよ」
「まあ、喧嘩が終わって良かったよ」

そうして着いた会場で、ジャンとミシュリーヌの金婚式のために用意されたテーブル

金婚式とは言っても、店を貸切にしたわけではないようだった。どうやら、10人くらいの身内によるひっそりとしたお祝いのようだ。僕は全くフランス語が分からず、何をできるわけでもないのだが、はたして来て良かったのだろうか。

ミシュリーヌの姉が来て、その孫娘と彼氏が来る。そしてミシュリーヌの友人夫妻が来て、また友人夫妻。他は、ジャンマークとその婚約者イザベル、そしてマリーヌと僕とピエール。合計で14人。

近くに座ったマリーヌの親戚たちと簡単な会話をし、美味しい料理を食べながら、時間は進む。そうして、店の入口近くのスペースでのバンド演奏が終わり、いつの間にかダンスの時間になっていた。

恐怖の時間

店に来ていた他の客たちが、店の入り口のスペースに出てダンスを始める。陽気なカップルや子どもたちが、音楽に合わせてたんたんくるくるしている。しかし運動神経の全くない僕には、その時間は恐怖でしかなかった。もしかして、踊れと言われるのではないか、嫌だな、ていうか絶対にムリだし。。。

しかし、嫌な不安というのは的中する。主役のミシュリーヌに「コウモリも来て」と言われたのだ。周囲も、「ミシュリーヌと踊ってこいよ」という雰囲気だ。最近になって義務教育に取り入れられたとはいえ僕の年齢の日本人はダンスの素養がないのでさっぱりダメなんですと言いたいところだけれど、主役に誘われて断るなんて失礼なことが出来る空気ではないのだ。

仕方なく、恐る恐るミシュリーヌの背中を抱いて、左足と右足を交互に動かす。
うーー、さっぱり分からん! 
恥ずかしすぎて、その曲が続く5分はとても長く感じられた。そして、僕の下手さ加減を咎めることもなく、今度はマリーヌと踊れと言ってくる。マリーヌは僕以上に日本人らしい恥ずかしがり屋なところがあるので猛烈な勢いで断っていたのだが、そんなのってズルい。こっちは死ぬほど恥ずかしい思いをして踊ってたんだから、とヤケになった僕は、無理やりマリーヌの手を引いてダンススペースに行った。

うーーー、やっぱり分からん!

それでも、なんとか5分くらいの時間を乗り切った。足がもつれて転げてしまう事態が避けられただけでも良かった、いつもの自分なら転んでテーブルにぶつかってワインがしゃーん位になってもおかしくなかったわけで、それと比べればかなり良かったのではないか、とも思う。

夫婦の歩み

僕とマリーヌがテーブルに着いたとき、ずっと「わしは踊らん」と言っていたジャンの手をミシュリーヌが引いた。そうしてダンススペースへと進んだ二人は、歩んできた50年の結婚生活を確かめるかのように、ゆっくりとステップを踏んだ。

他のヒトのように目を引く激しいダンスではないけれど、70を超えてダンスしつづけている元気なミシュリーヌと、そのミシュリーヌを抱いて踊る80を超えたジャン。

なんだ、やっぱり仲良いんじゃん! 超カッコいい!

店に来る車内で口喧嘩をしていたときは、「金婚式で喧嘩したらどうすんだろ、周りの空気も凍るんじゃないかなー?」と勝手な心配していたのだけれど、やっぱり僕の想像を遥かに超えて世界は複雑なんだと思った。金婚式、来て良かった。いいもの見れたよ。

ただ、僕の想像を最も超えていたのは、帰りの車中で再びジャンとミシュリーヌの口喧嘩が始まったことだった。

いつものことではあるけれど、ぐったりしているピエールとマリーヌ。そこに、今度は僕も加わっていた。ああ、こりゃあもうどうでもいい知らんわ勝手にしてくれ、って思うのも頷けるよ。

結婚生活を50年つづける秘訣

次の日。せっかくなので僕は、ミシュリーヌに聞いてみることにした。
「ねえ、ミシュリーヌ。どうやって50年も結婚生活を続けられたの?」
「お互いに合わせた(adjust)、それが一番よ」
「なるほど」
「あとは、それぞれの時間や、それぞれの行動を尊重したことかしら」
「うん」
「私は友達と出かけたり、買い物に出かけたりする。そのとき、無理にジャンを誘わない」
「そうなんだ」
「ジャンと行ってもつまらないからね(笑)」
「そうなんだ(笑)」
「ジャンも、自分の時間がある。お互いの時間を、無理に奪わないこと」
「なるほど」
「50年は…本当に長いものよ。決して簡単ではないの、それでね~」
この後のミシュリーヌの話は長かったので、僕は途中で「その英単語は分からない」というフリをする頻度を高めて、逃げた。ジャンが社長をしてたときに秘書の女が言い寄ってきてたみたいで大変だったとかジャンはとにかくモテるヒトだったとか、そんなんどうでもいいのでとりあえず要約すると、「お互いに合わせるのが大事」ということらしい。なるほど。それ、最初に言ってたやつじゃん!

まあでも、確かにそれは金言だろうな、と思う。
「ミシュリーヌにこういう話を聞いた、長かったけど」
マリーヌに告げると、マリーヌも同意する。
「そうかもね。でもミシュリーヌは、本当にたくさん話すよ。こっちの話を聞かないで話すからね」
「まあ、歳を取ると、みんなそうだよ。いっぱい喋りたいんだよ」
「いつもこっちがスカイプで大変なのが分かったでしょう?」
「まあね(笑) でも、良いことも聞けたし、話を聞いてあげるのも大事だよ」
「いつも、けっこう頑張って聞いてあげてるけどね」

面白い老夫婦。ベッドから食事から、滞在中の全てをお世話になった2人に、僕はとても感謝している。それと同時に、2人のことを思い出すといつも笑い出しそうになってしまう。

結婚記念日の前の日も当日も次の日も、その次の日も。僕らが滞在している間も毎日、ジャンとミシュリーヌの口喧嘩は止まらなかった。その口喧嘩はきっと、栄光に向かって走っているのだろう。


どんな記念日なんかより、あなたが生きている今日は、どんなに素晴らしいだろう。
嫌らしさも汚らしさも、剥き出しにして走ってく。

あ。2人を見て思い出した素晴らしい日本の歌があるって、伝えておけば良かったかも。

歌詞サイト

→動画。

The Blue Hearts - Train Train - YouTube



つづき。
フランス滞在記⑫ 日本人は友達付き合いが少ない!?

これまで。
フランス滞在記①出発前 →旅のミッション・若年失業率
フランス滞在記②飛行機 →日本のコミュニケーションの前提
フランス滞在記③電車  →日本の治安は素晴らしい・殺人発生率 
フランス滞在記④スーパー→日本の労働、やっぱり変!?・労働時間
フランス滞在記⑤車内  →彼女の母に言われたコトバ
フランス滞在記⑥塔   →エッフェル塔が超えぐれてた日
フランス滞在記⑦都心  →日本のイメージ・世界の好感度ランク
フランス滞在記⑧布団  →フランスの嫁姑戦争
フランス滞在記⑨食卓  →食事ってどれくらい時間かける?・食事時間
フランス滞在記⑩台所  →日本の男性、仕事しすぎで家事しなさすぎ!・仕事と家事の時間

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