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フランス女性と同棲中

ナンパしたフランス人と同棲する高卒ニートの整理と極論

フランスの嫁姑戦争/ニートのフランス滞在記⑧

私的な日記 フランス滞在記


森の中にある郊外の町、シュブルーズ。
そこに彼女の母と弟が住んでいる。
フランスに来て数日、僕らはその実家で寝泊りしていた。

嫁姑戦争

そして今度は、彼女の祖母(父方)の家に泊まるらしい。
この3週間のフランス滞在では、僕らの予定はすべて決められている。
母パスカリーヌの家を拠点にして、父方の祖母ミシュリーヌの家、母方の祖母ドミニクの家、父ジャンマークの家、合計4つの家を訪ねてまわるのだ。

ややこしい。。。

けれど僕自身、どこに行きたいなどという大した希望もない人間なので、「せっかくフランスに来たのだから」とか、そんなんどうでもいいのだ。暖かい部屋とインターネットさえあれば、そこがどんな場所であろうが、粛々と引き籠もるだけなのである。

「ミシュリーヌの家は、インターネットつながるよね?」
「もちろん」
「良かった。あと結婚50年のパーティも、楽しみだね」
「うん。まあでも、もう少しゆっくりしたいけどね」
「仕方ないよ」
「こっちには、本当に自由がない。行くところがぜんぶ決められて」
「家族みんなマリーヌに会いたいんだから、仕方ないよ」
「でも、いつもそれでケンカだよ」

聞くところによると、僕とマリーヌを誰がミシュリーヌの家に連れて行くか、それで今も揉めているのだという。パスカリーヌは「ミシュリーヌが迎えに来て」と言い、ミシュリーヌは「パスカリーヌが連れて来て」と言っているそうだ。なるほど。

マリーヌの母パスカリーヌと、父方の祖母ミシュリーヌ。2人はいつも「マリーヌとピエール」をめぐる綱引きを続けている。綱を引くヒトたちも大変だろうが、引っ張り合う綱にされてしまったヒトも大変だ。ライトな綱であれば引きちぎられてしまってもおかしくないのだ。いなば。

例えば今回、マリーヌは祖母行きつけの美容院で髪を切ることになっている。マリーヌが僕にそれを話すとき、このことはパスカリーヌには内緒にしてね、と言った。それが母にバレてしまっては、新たな揉め事を引き起こすことが目に見えていたためである。美容院に行くにも病院に行くにも、その一挙手一投足を巡って、元嫁・元姑の間で縄張り争いが起こるのだ。

パスカリーヌとジャンマークは、数年前に離婚した。
その原因の1つに、この嫁姑戦争があったのではないか、と僕は想像する。

家族の歴史

パリ都心にほど近い町セーヴル。そこにマリーヌの祖母ミシュリーヌと祖父ジャンは住んでいる。2人の勤め先であるテレビ局へも近く、便利な町だ。東京で言えば、渋谷に近い中目黒、あたりの感覚なのだろうか。パリ中心(≒山手線の内側)ではないが、地下鉄が通る場所。2人の住むマンションからは、眼下から続く幹線道路の先にエッフェル塔とパリ中心の灯りが見える。

ミシュリーヌとジャンの1人息子であるジャンマークは、両親と同じテレビ局で働き始め、そして同じテレビ局に勤めるパスカリーヌと結婚した。

結婚後、彼らはジャンマークの両親と同じマンションで暮らしていた。ほどなくマリーヌが産まれ、8年後にはピエールが産まれる。マリーヌの回想によれば、当時はよくマンション内の祖母の家と自宅とを行き来していたのだそうだ。寝る前にはベランダに出て、同じマンションの斜め上にある祖父母の家に向かって手を振っていたという。ベランダtoベランダ。ちょっとした二世帯住宅のような感じなのかもしれない。

そしてピエールが2歳の頃、パスカリーヌの「自然の多い場所で子育てがしたい」という意見をジャンマークが聞き入れて、4人はセーヴルからシュブルーズに移り住んだ。

なるほど。

その数年後、パスカリーヌとジャンマークの離婚が決定した。マリーヌとピエールは母パスカリーヌのもとで暮らすことになった。それ以来、姉弟は1~2週に1度、父と祖父母が暮らすセーヴルのマンションを訪れるようになる。姉が日本へ旅立つ日まで。

姉弟の歴史

おそらく、僕らのフランス滞在が誰の家に何泊するかということも、すべてパスカリーヌとミシュリーヌの間での綱引きの末に決められたのだろう。

おつかれさまです。決めて頂いてありがとうございます。有無を言わずに全乗っかりできることだけが、不肖ニートの取り柄でございます。

ただまあ、僕のような立場であれば、へらへらと愛想笑いを浮かべているだけでも良いかもしれないが、いつも戦場で引っ張り合いされている当のマリーヌやピエールにとっては、けっこう辛いことが多かったのだろうな、と思う。マリーヌが遠い異国である日本の文化に興味を持ち出したのも、ピエールが明るくひょうきんになったのも、きっと子供なりの適応だったのだ。

そして僕は、この姉弟の適応方法に対して、すごく好感を持っている。

ピエールは、無邪気で可愛らしく、誰もが好感を持つジョーク好きな少年だ。食事のときにもジョークばかりなので、よく水をこぼしたり皿から料理をこぼしたりで、テーブルを汚す。「もう、またこぼして!」「ピエール!またバカなことして!」そう怒られることがすごく多い。けれど、ピエールのそれらは必ず場面を選んでなされている。小学生男子とは思えないほど、恐ろしく空気の読める子だな。それが、僕のピエールに対する第一印象だった。今から2年前、初めてピエールに会ったあとの僕は、なぜかビスケのコトバを思い出していた。

この年でオーラを電気に変化させるなんて、おそろしい。
でも、それ以上に哀しい子。日常が地獄だったはず。
今こうして笑顔でいられるのが奇跡的なほどの。
ホントにいいコンビなのね。
   ビスケット=クルーガー『HUNTER×HUNTER』15巻

セーヴルに向かう前夜、布団の中。家族の歴史を話しながら、マリーヌは言う。
「ピエールと私の2人にしか分からないことがある」
そうだろうな、と僕は思う。
静かに告げられたそのコトバは、とても強い確信に満ちていたからだ。
「良い弟がいてくれて良かったね」
「うん、本当にそう思う。それに弟は、すごく賢いよ」
「知ってるよ」
「いつもバカなことしてるけど、本当はとても賢い」
「こっちと同じかな?(笑)」
「違うよ、コウモリはバカなだけだからね(笑)」
「そうだね(笑)」
「嘘だよ、本当は賢いよ。そう言えば前にお父さんも、コウモリはピエールに似てるって言ってた」
「それは嬉しい! まあ、僕はピエールみたいに可愛くないけどね」
「もちろん(笑) たぶん、子どもみたい、って意味だよ」
「そうかもね、こっちの精神年齢は15歳くらいで止まってるから」
「そうだね、若くて良かったね(皮肉)」
「でも、ちゃんと大人だよ。調べてみる?」
「ああ。やっぱりバカだった(笑)」

複雑な世界

仲良くしてほしいハズの家族が、自分たちを引っ張り合うことで争う。そのことが、家族思いで繊細な彼女にどれほど暗い影を落としていただろう。
「みんな、仲良くしてほしいよ」
気付けば、マリーヌは泣いていた。
パスカリーヌもミシュリーヌも、その涙を知らない。

けれど、僕はパスカリーヌやミシュリーヌにも、とても好感を持っている。彼女たちは争いこそすれ、マリーヌやピエールを大事に思う気持ちがとても強いのだ。だからこそ、姉弟はとても素敵に育っている。(もちろん、2人の資質と努力もあったと思うけれど。)

世界は、いつも、複雑だ。



つづき。
フランス滞在記⑨食卓  →食事ってどのくらい時間かける?・食事時間


これまで。
フランス滞在記①出発前 →旅のミッションと若年失業率
フランス滞在記②飛行機 →日本のコミュニケーションの前提
フランス滞在記③電車  →日本の治安は素晴らしい・殺人発生率 
フランス滞在記④スーパー→日本の労働、やっぱり変!?・労働時間
フランス滞在記⑤車内  →彼女の母に言われたコトバ
フランス滞在記⑥塔   →エッフェル塔が超えぐれてた日
フランス滞在記⑦都心  →日本のイメージ。世界の好感度ランク

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