彼氏は日本人。彼女はフランス人。

日本人とフランス人の国際カップルの記録

なぜ日本の「外国人旅行者に対する態度」は世界74位なのか

前回

日本の「おもてなし」は世界で74位!? - コウモリの色眼鏡

のつづき。

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我が家の国際派である同居人の感想としては。

外国人旅行者への態度の面での「おもてなし」を

Aビジネス面でのサービス     : 良い       

Bパブリック面でのマナー     : 悪い

Cプライベート面でのホスピタリティ:   - (世界共通)

 と捉えているようだった。

 

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これについて、言いたいことをとやかく言ってやろう。

 

Aビジネス面

サービス残業に象徴される世界屈指の「労働意識」が、高いクオリティのサービスを提供するハズだ。貧相な私生活(有給消化率・交際比率・セックス頻度)と引き換えに実現しているのだから、当然だよねっ人◕ ‿‿ ◕人 

 

Bパブリック面 (ここでのパブリックは、見知らぬ人同士の環境って意味)

日本にはパブリックの概念やパブリック・マナーがない、と言われることがある。知り合いの前では「和をもって尊しとなす」けれど、知らない人の前では「旅の恥はかき捨て」だから、と。

 知らない人同士の揉め合いの中で培われた文化と、知り合い同士が和をもって尊しとなす文化は、違って当然だ。だから、日本人がパブリックの概念に親しみがなく、公共マナーが悪いことも仕方ないと言えたかもしれない。。。昔は。

 けれど、知らない人が大量に行き交う「都会」が日本に登場してから幾星霜。大阪万博を控えた1970年には公共広告機構がぽぽぽぽ~んと産声を上げ、エ~シ~の鳴き声ともに「公共」を叫び出してから半世紀も経つのだ。東京オリンピックが開かれる2020年には。さすがに、パブリック(公共)マナーという概念は、僕ら日本人にも親しみがあるってもんだ。

 公共広告機構の産みの親、当時サントリー社長だった佐治が「日本人の社会的マナーはひどい、このままじゃ恥ずかしすぎる」と思った1970年に比べて、時代は変わったのだ。2011年の地震の際には、「こんな非常時にも電車を待つ列を乱さない日本人、クール!」と、そのマナーが世界の賞賛を集める場面もあったくらいなのだ。そういうわけで、我が家の同居人も、来日当初は「日本人はマナーが良い」というイメージを持っていた。

 しかし。日本に住んで2年、彼女のイメージは残念な方へと変わってしまった。

「日本には、マナーが悪い人も多い」。彼女の感想を要約すると、こうだ。

 電車での化粧、列の横入りなどのエゴイスティックな行動もときどき見かける。たしかにルールとしてのマナーを守る人の率は高いが、その割合が他国に比べて特別に高いというわけではない。少し優位な差があるくらい。それより他国と圧倒的な差があるのは、席を譲ったり荷物を持ったり扉を開けたりするマナーだという。特に、その配慮が必要な妊婦や老人や障害者への配慮不足。そして外国人や障害者や非異性愛者(LGBT)へ向ける奇異の目、あるいは蔑視。マイノリティに向ける目線については、TVに出るオカマ・ガイジンの多さと、彼ら(彼女ら)を利用した差別的笑いの共犯関係が、その現状を表している。「どうしてこんなにオカマやガイジンがテレビに出ているの?」「男性も女性も、あるいは日本も海外も、両方の気持ちが分かる特別なポジションの人として出ているんじゃないかな」「それにしては、この人たちへの差別的発言が多すぎるよね」「たしかにね、それは僕も嫌いなとこ。笑えない。いや、演者はみんなワザとやってるし悪意はないと思うんだけど。演者にそうさせているのは、テレビを見ている視聴者だと思うから。そこには蔑視と表裏一体になった尊敬もあると思うんだけど、あまりに差別的な笑い表現が多いし、ちょっと蔑視の側面が強くて酷いかもね」

 このことを、僕はこう考えている。

 日本では、ルールに従う消極的マナーは良く発達したが、他者に働きかける積極的マナーはあまり発達していないのだと。ただ、このことから「もっと積極的マナーを身に付けよう」と短絡的に言うつもりはない。日本のパブリック・マナーは、他国と違う独自の進化を遂げて(いわゆるガラパゴス化して)いて、その中には面白い可能性が含まれていると思うからだ。

 いま消極的マナーと積極的マナーという言葉を使ったが、これは「コミュニケーションを減らすか増やすかの違い」とも言える。

 もともと日本には、見知らぬ人同士の環境が少なかった。そのため、知らない人とのコミュニケーションも苦手だ。そこへ「都会」ができ、見知らぬ人間の行き交う「パブリックな空間」が生まれた。そのとき日本人が取った戦略は、「見知らぬ人とコミュニケーションをして上手くやる臨機応変スキル個々が身に付けることではなく、見知らぬ人とコミュニケーションをせずに上手くやる固定的ルール環境として整えること」だった。僕は、そう捉えている。

 

例えば、駅のホームやコンビニの繁盛店の並び線。

 線があるおかげで、電車やレジを待つ人が、アイコンタクトをとり会話をして順番を決める手間を省くことができる。ただ、線に並ぶというルールを守るだけで済む。

 例えば、自動販売機。ドリンク・フード・食券。絵や写真を見てコインを入れるだけで、店主とのコミュニケーションをしないでも欲しい物を手に入れることができる。

 不要なコミュニケーションの省略。

 それは、氾濫する情報の中で常に認知資源の消費を求められる現代社会では、必須の戦略だ。日本は、コミュニケーションを省略する環境設計において他国に先駆けている。

 だから僕は、日本人の全員が積極的にコミュニケーションをとるようになる必要はないと考えている。

 エレベーターの中で会話しない。それで良いと思う。「会話しなくても不自然でない環境」を設計すれば良いのだし、おそらく2020年にはそうなる。「日本のエレベーターでは、誰も会話してなくて気まずかった」ではなく、「日本のエレベーターって面白かった」となるようなデザインをすれば良い。「日本人は、後ろに人がいてもドアを開け抑えておかない」ではなく、「日本のパブリックなドアは、ぜんぶ自動ドアだった」となれば良い。実際に、日本はその方向に進んでいると思う。

 ただしこの「環境設計」という戦略には、デメリットがある。先にも挙げた通り、環境設計に取り込まれなかったマイノリティが圧倒的な不利を受けることだ。

 全てのマイノリティが何の手助けも要らない環境を設計することは、このさき数年という単位では、まだまだ無理だ。そのため、妊婦や障害者であれば何らかの手助けが必要な場面はこれからも多い。にも関わらず、「環境にマナールールを設計する」という戦略は、「個人のマナースキルを養成する」という戦略とトレードオフの関係にあるからだ。

 並び線がなければ、電車に誰が先に乗るかをその都度考えて決めるコミュニケーションが必要になり、そのコミュニケーションの習慣(とそこから生まれるスキル)が、まず妊婦の荷物を持つことや障害者に手を貸すマナーを生み出す。

 同居人は、日本の駅で大きく掲げられている「席を譲りましょう」などのポスターに驚いて笑っていたが、そういうことなのだ。マナーは、ポスターに呼びかけられて身に付くようなものではなく、日々の行動習慣の中で形成される以上でも以下でもない。僕ら自身がうすうす感づいているように。

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 では、日本はこれから、どうするべきだろうか。

 ひとりひとりがマナーを頑張りましょう、みたいなつまらないことを言いたくないので、一応なりに僕のアイデアを出すと。

①臨機応変のマナースキル(積極的なコミュニケーションスキル)を、強制的に身に付けさせた人材を育成しよう。

②そして、マナースキル会員を、ドナー登録みたいに「マナー登録」をさせてしまおう。

すると、例えば妊婦が電車に乗り込むとき、誰かに手伝ってほしいなと思ったとする。そんなとき、マナー登録に問い合わせる。すると、近くにいる「マナー登録員」のタブレットに連絡が行き、手伝ってもらえる。

 

そこまでする必要あんのか、と思う方もいるかもしれないが、東京オリンピックを控えて、そろそろ本格的に考えないといけない時期だと思う。なんか良いアイデアがあれば良いのだけれど。

 

思ってた以上に長くなって、辛い。おしまい。

 

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